最近ヘアカラー剤に添加剤を混ぜるサプリメントカラー・ヘアカラーサプリ・サプリカラーなどを見かけます。
SNSでも「髪質改善ブームの次は、ダメージしないサプリカラーの時代!」といったキャッチーなフレーズと共に、どんなカラー剤に混ぜてもダメージを従来の6分の1に抑えられるという魔法のサプリメントカラーが紹介されているようです。
サプリメントカラーの広告では、「染めるたびに髪が元気になる」と謳われ、その根拠として「空洞率の低下」や「電気伝導度の安定」、「表面摩擦係数の改善」といった専門的な数値が並べられています。中には「リラクゼーション指標」といった、あまり耳慣れない言葉まで……。
「このサプリメントカラーは全国でも類を見ないオリジナルシステムで、バージンヘアのような質感の色だけをカスタマイズできる」 「白髪染めを使わない白髪染めで、ストレスフリーを実現」 「さらに、高濃度水素水と高濃度酸素水で若返り効果も抜群」……もしこれが本当なら、まさに夢のようなカラー剤ですよね。
でも、毛髪理論を正しく理解している立場からすると、少し冷静に考える必要があると感じています。
今回は、このサプリメントカラー(ヘアカラーサプリ)の真実について、毛髪理論の観点から解説します。
魔法のサプリメントカラーはダメージレス?
読者の美容師さんから、SNSで紹介されてるカラーサプリメント(添加剤)について質問をいただきました。
「最近インスタやFacebookで『魔法のサプリメントカラー』という添加剤を見かけます。ミルボンなどの一般的なカラー剤に混ぜるだけで、髪の傷みが1/6になるという宣伝です。空洞率や電気伝導度、摩擦係数が改善すると謳われていますが、詳しい成分は明かされていません。こんな添加剤を入れるだけでダメージが激減するなんて、本当にあり得るのでしょうか?」
結論から言うと、通常のアルカリカラーにおいて、
どんな添加剤を混ぜてもヘアダメージが1/6になることは絶対にあり得ません。
同じ髪を同じ明るさ(トーン)にリフトアップさせる以上、添加剤や処理剤を使ってもダメージ量は基本的に変わりません。それどころか、過度なコーティングによってかえって髪の傷みを悪化させるリスクすらあります。
なぜ「ダメージ1/6」が理論上不可能なのか、毛髪科学の観点からわかりやすく解説します。
ヘアカラーダメージの原因は「アルカリとオキシでの脱色作用」
ヘアカラーで髪が傷む最大の原因は、メラニン色素を破壊するブリーチ(脱色)作用にあります。これは明るいファッションカラーだけでなく、自然な明るさの白髪染めでも全く同じです。
よく「アルカリ剤はキューティクルを開くだけのもの」と誤解されがちですが、現在の毛髪科学におけるアルカリの最大の役割は過酸化水素(オキシ)の活性化です。
- オキシや染料の浸透
過酸化水素(2剤)や染料の分子は非常に小さいため、キューティクルを大きく開かなくても髪内部へ浸透していきます。 - アルカリによるオキシの爆発的な活性化
過酸化水素は「弱酸性」の状態では非常に安定しており、単体ではほとんどブリーチ(脱色)作用を起こしません。そこに1剤の「アルカリ」が合わさることで一気に分解反応が進み、強力な酸化力(活性酸素)を生み出します。 - メラニン色素の破壊(脱色)と発色
アルカリによって活性化したオキシが、毛髪内部のメラニン色素を酸化・破壊して髪を明るくし、同時に染料を酸化重合させて発色させます。
つまり、髪を明るくリフトアップさせる強力な破壊力は、「アルカリによって強制的に活性化されたオキシ」が生み出しているのです。
この化学反応が起きる際、メラニン色素だけでなく毛髪内部のケラチンタンパク質までもが不可避的に破壊され、ダメージホール(空洞)が形成されます。同時に、キューティクルの保護膜である脂質(18-MEA)も失われてしまいます。
髪の明るさは「メラニン色素をどれだけ壊したか」に直結します。
目標の明るさに染める(同等に脱色する)=同等の毛髪破壊が必ず起きるということです。
もし本当にダメージを1/6に抑えたいなら、アルカリやオキシの強さや濃度を大幅に抑え、8トーン希望の髪を5〜6トーン程度の暗さにしか染めないようにするしか物理的な方法はありません。
専門用語(空洞率・摩擦係数・電気伝導度)のからくり
広告でよく使われる専門用語も、毛髪理論で見れば根本的なダメージ軽減にはなっていません。
- 空洞率の改善
ケラチンなどのPPT(タンパク質)を補給しても、自毛の組織と同化・結合することはありません。せいぜい1〜2週間のシャンプーで流れ落ちる一時的な穴埋めに過ぎません。 - 表面摩擦係数の改善(手触りアップ)
シリコンやポリマーによる一時的な皮膜(コーティング)です。過剰なコーティングは薬剤の残留やインナードライ(結合水の減少)を招き、長期的にはダメージを進行させます。 - 電気伝導度の改善(静電気防止)
保湿成分や帯電防止剤で一時的に電気の流れを整えているだけで、傷んだ毛髪構造そのものが修復されたわけではありません。
これらはすべて一時的な「対症療法(ごまかし)」であり、アルカリとオキシの反応によって壊れた毛髪組織が元に戻っているわけではないのです。
どんな魔法の成分でも「破壊された髪」は再生しない
- ヘアカラーのダメージの本質は「アルカリで活性化したオキシによる毛髪組織の破壊」
- 同じ明るさに染める限り、添加剤でダメージを1/6に減らすことは絶対に不可能
- ツヤや手触りの向上は一時的なコーティングに過ぎず、根本治療ではない
髪は死滅細胞(減点法で傷んでいく組織)であるため、一度失われたタンパク質や18-MEAが再生することはありません。
「混ぜるだけで傷まない」「染めるほど髪が良くなる」といった甘いフレーズに惑わされず、毛髪の仕組みに基づいた適切な薬剤選定とダメージコントロールを行うことが何より大切です。
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執筆者プロフィール:森下 秀彦(どS美容師)
美容メーカーでの薬剤研究やサロン経営を経て、全国のプロの理美容師を対象にパーマ・縮毛矯正・ヘアダメージ論のセミナー講師を務める毛髪専門家。群馬大学元教授との共同研究や特許成分の実用化など、科学的根拠に基づいた革新的な薬剤・技術プロセスの開発に長年携わってきました。
⇨ [筆者のより詳しい「研究実績・専門経歴」はこちら]










コメント
質問をした者です。
丁寧に答えてくださりありがとうございました!do-sのシャントリを始めようと思っているので、折角挑戦するならなるべくサロンでのトリートメントをなくしたいと思って質問させていただきました。とてもわかりやすかったです。
(ちなみにヘッドスパのオイルは、オージュアのスパオイルです。一般人では中身が何なのか調べてもわかりませんでした…。)
このコメントを書いている途中でシャントリが届いたので、今夜から継続して使ってみます!