くせ毛をストレートにするストレートパーマや縮毛矯正といわれる美容室メニューの工程では、1剤で還元したあとシャンプーブースで中間水洗してから担当の美容師さんが…
- ブラシでブローしてストレートに伸ばす(ブロー式)
- ドライヤーで乾かした後でアイロンでストレートに伸ばす(アイロン式)
- ブラシでブローした後でアイロンでストレートに伸ばす場合(ブロー&アイロン式)
だいたいこの3パターンがあるのです。
施術時間は長くなってしまいそうですが3のブローとアイロンの両方したほうがよりくせ毛が伸びそうな感じがするのですが… 実際はどうなんでしょう?
ダメージやくせ毛の伸び方などを考えるとどの方法がベストなのでしょうか?
そこで美容師さんからこんな質問を頂きました
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いつもありがとうございます。
dosの縮毛矯正使わせて貰ってます。
アイロンの前にブローをすると癖が伸びにくいって事ありますか?
ブローはなしでアイロンのみの方がいいでしょうか?
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そこで、DO-Sの縮毛矯正剤を使用されてるとのことなのでこのようにお答えしときました↓
縮毛矯正専用の特殊なブローテクニックではなく、一般的なブローの場合ならついつい髪の毛の水分量を減少しすぎてしまう場合もあるので、アイロン工程でクセが伸びにくくなってしまうことがありますね。
ですので一般的には縮毛矯正のアイロン工程前にブローはしない方が良いと思います。
え??? ブローはしないほうが良いの???
って思う理美容師さんもいると思うので、なぜブローをしないほうが良いのかを深掘りして解説していきたいと思います。
ストレートパーマ・縮毛矯正の歴史
ブラシでブローか?アイロンスルーが良いのか?の前にストレートパーマ・縮毛矯正の歴史からお話を始めましょう。
最初にストレートパーマが登場したのは昭和50年代、ちょうど場末のパーマ屋が美容師を始めたばかりの頃でした。最初の頃はパーマ液をクリーム状にした1剤を髪に塗布してパネルに貼り付けて放置して還元し、中間水洗後に2剤を塗布する方法でした。パネルに擦りすぎてヘアダメージしたり根元に薬剤塗布して折れ毛、切れ毛になって裁判沙汰になったりなどのトラブルも発生したとか… この初期のストパーは、正直にいって癖毛はあんまりストレートにはなりませんでしたね(汗)
そして平成になる頃に登場したのが、1剤で還元後にブラシでブローしてから2剤処理を行う現在の縮毛矯正の元祖とも言えるブロー式の施術方法でした。これマジで画期的で強い癖毛でもツヤツヤの綺麗なストレートになりましたからね。
ただね… こいつにはとても困難な問題がありました(涙)
薬剤塗布やブリーテクニックなどの施術技術がとても難しく、かなり上手な美容師さんでないと失敗する可能性が高かったんです!
当時の薬剤は特殊なポリマー入りの1剤をたっぷり塗布して1時間以上スチーマーで加温するという感じで、過剰なS-S還元・アルカリ軟化と強烈な表面コーティングしたテロテロの崩壊寸前のような毛髪を濡れたままでブラシで適切なテンションを加えてドライヤーの熱風で一気に加温&乾燥させなければいけなかったのです。
長時間&加温によるチオでの過還元・アルカリでの過軟化・ポリマーコーティング・ブラシテンション・フルウエット状態からのドライヤー加温、これらをすべてバランスよく施術するテクニックが必要だったのです。しかもポリマーコーティングが取れるとそもそものハイダメージが露出してしまうことも多かったのです。
このブロー式の縮毛矯正は技術的にとっても上手な一部の美容師さんだけが施術可能な特殊メニューだったのです。
そこで一般的な美容師さんでも縮毛矯正が出来る方法として考えたのがアイロンで加温する施術方法だったのです。乾いた髪をアイロンスルーで加温する方法でウエットでのブラシブローのような危険性がなくなり縮毛矯正は一気にメジャーになりました。
ただメジャーになったことで商人美容師さんたちが、くせ毛がストレートになるだけでなくポリマーでの表面皮膜コーティング効果でダメージ毛でも艶々サラサラの美髪になる!ヘアトリートメントでくせ毛がサラサラストレートヘアに!などと宣伝し本来はコンプレックスメニューである縮毛矯正をあたかもダメージ修復トリートメントメニューのように売りだしたのです。当時は地方都市でも『縮毛矯正専門美容室』なんてのも登場しました。
ま〜こんなデタラメな話が長く続く訳もなく、またヘアカラーリングが普及したことで施術が難しくなったこともあり1〜2年で縮毛矯正専門美容室もほとんど無くなり「縮毛矯正はヘアダメージ修復トリートメントではなく髪を傷めるメニューである」ということも一般の方に認識されるようになりました。
そして…
この頃から縮毛矯正は髪は傷んじゃうけどくせ毛を伸ばす美容室でのコンプレックス解消メニューとして正常進化していくのです。
縮毛矯正後のダメージの原因であって強烈なポリマーコーティングはライトなシリコン系ポリマーに変わったり、DO-Sなど一部のメーカーではシリコン皮膜も使用しなくなったりしましたし、あとアイロン工程もビビリ毛対策から始まった『水抜きアイロン技法』などの登場で毛髪加温理論も整理されました。
ただ最近は薬剤的に弱酸性のスピエラやGMTの登場で過激な水抜きアイロンや酸性による2剤の酸化不足等で逆にヘアダメージしちゃうようなケールも出てきてしまったのですけどね(汗)
ということで最新の縮毛矯正理論では、適切なアルカリ・還元剤の強さとシリコンなどのコーティング剤などの薬剤とアイロン工程での水分やテンションなどを高次元でバランスさせて出来るだけヘアダメージを軽減しながら癖毛をストレートに伸ばすようになってきました。
縮毛矯正の歴史から考える薬剤パワーと熱処理パワー
縮毛矯正での薬剤パワーというのはチオグリコール酸等の還元剤の濃度が濃いほど、pHが高くアルカリ性になればなるほど還元力が強くなり、髪に塗布して放置時間が長くなったり温度が高くなるほど多くのS-S還元をするようになります。
ただし基本的には薬剤でS-S結合を多く切断すればするほどヘアダメージも増加することになります。
また最新のパーマ理論で中間水洗してもイオン化されていない還元剤は流れないという事と、還元剤の反応は髪が濡れている時に進行し乾燥すると還元はストップするという基礎理論もよく理解しておいてください。
これはこれから解説していくブローやアイロン時に、髪に水分が残っている状態で加温すると還元はドンドンと進行するという事なんですね。
ブローやアイロンでの熱処理では『温度』『テンション』『水分量』の3つの要素でくせ毛を伸ばすパワーが変わります。
これらは温度は高いほうが、テンションは強いほうが、水分量は多いほうがクセを伸ばす力は強くなりますが、髪への負担は大きくなりダメージが激しくなるのです。
ここで考えておかないといけないのは、ブロー式の場合はドライヤーでの温度は100℃前後でアイロンの場合は160〜180℃程度とかなり温度が高いという事です。
ですので初期の頃の縮毛矯正では、1剤の還元は現在よりかなり強い還元・軟化状態の髪でしたし、ブロー式の場合は髪が濡れてる状態で適切なテンションを加えながらドライヤーで100℃程度のパワーとアイロンだと乾燥した状態で160〜180℃程度の加温で同じぐらいのパワーだった訳です。
還元軟化されまくったテロテロの髪の毛を、フルウエット(びしょ濡れ状態)でしっかりとテンションかけて100℃のドライヤー熱で速攻乾燥するって…
ちょっとテンションがゆるければ癖も伸びないし、ほんの少しテンションかけ過ぎるとハイダメージのビビリ毛で大失敗とか… 想像するだけでもかなり難しい技術ですよね(汗)
しかしアイロンの場合なら、ある程度乾燥してからテンションかけるので過剰にダメージする危険性は少ないし、失敗するとしたら乾燥しすぎとか、還元不足で癖の伸びが悪くなる感じが多いのです。
その後縮毛矯正でのヘアダメージ軽減のため、少しずつアルカリを抑えたりポリマーコーティングを軽度にしたりなどの薬剤改良が進んできた事もあり、ブロー式では癖を伸ばすのが難しくなってきましたし、アイロン式でも乾燥度合いを緩めたりアイロンスルーをゆっくりにしたりなど薬剤パワーが弱くなったのをカバーするようになりました。
そして平成の終盤にスピエラやGMTなどの酸性でも還元力のある還元剤の登場で酸性〜弱酸性縮毛矯正が登場しました。ただここでアルカリ性でなくなった事で薬剤パワーが急激に弱くなったので『水抜きアイロン技法』という毛髪に水分が残った状態で160℃以上の高温アイロンをして還元を急加速させながらテンションをかけ熱変性を起こすというかなり危険性を伴う難しいアイロン技法を行わないといけなくなりました。
それに追加して酸性のため2剤での酸化不足もあったりして初期の頃のブロー式同様に酸性縮毛矯正は失敗しやすい難しいメニューになってしまったのです。
そこで今のところベストだと思われるのが…
場末のパーマ屋でもおすすめしている『低アルカリ高還元剤濃度で表面コートの少ない薬剤』で還元し、危険性のない程度の適度な水分を保持した髪に最適なテンション・プレス圧でのアイロン処理を行う という縮毛矯正なのです。
縮毛矯正でブローすると癖が伸びにくい場合がある?
よく縮毛矯正で、ブロー式がいいのかアイロン式がいいのか?とか両方したほうがよく癖が伸びるハズ!などと意見があるのですが、実は縮毛矯正の歴史で解説したように薬剤とのバランスがかなり影響するってことはよく理解しておいてください。
そこで質問にやっと戻るんだけど↓
>dosの縮毛矯正使わせて貰ってます。
アイロンの前にブローをすると癖が伸びにくいって事ありますか?
ブローはなしでアイロンのみの方がいいでしょうか?
まず確認しておきたいんだけど、、、
DO-S製の縮毛矯正剤は『中アルカリ中還元剤濃度でコート剤の少ない普通の薬剤』で…
DO-S式縮毛矯正に使う薬剤は『低アルカリ高還元剤濃度でコート剤の少ない危険性の少ない特殊な薬剤』
ってことは理解してるよね?
縮毛矯正での失敗を少なくするためのDO-S式の低アルカリ高還元剤濃度の薬剤
DO-Sの薬剤を使用してみたい!理美容師限定記事を読みたい理美容師さんは?
たまにDO-S業務用販売に「販売カートのどの商品が低アルカリ高還元剤濃度の縮毛矯正1剤ですか?」って問い合わせをいただきますが、DO-Sではそんな製品は販売していませんからね(笑)
そして君が使用してるのが低アルカリ高還元剤濃度のDO-S式縮毛矯正の薬剤だと考えて質問にお答えすると…
まず、DO-S式の縮毛矯正1剤はアルカリ度やpHが低く昔みたいにテロテロに軟化してないのでいくらフルウエットからテンションかけてブローしても癖が伸びる可能性はほぼありません。ブラシでキューティクルを傷つけるなどの髪に損傷を与えるだけです。
逆にアイロン前にブロードライすることで髪が乾燥しすぎてしまう場合があるので、その後のアイロン処理でくせ毛を伸ばすパワーが少なくなってしまう可能性があります。
DO-S式の低アルカリ高還元剤濃度の薬剤を使用する場合は、ブローなどは行わずに危険性のない程度の適度な水分を保持した髪に最適なテンション・プレス圧でのアイロン処理を行うのが重要になってきます。
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